8月17日-23日の日程で,当センターの永田教授・副総長,野邑特任教授,横山特任助教,伊藤特任助教がモンゴル国を訪問しました。
昨年12月に名古屋で児童精神科医養成研究を修了した10名の先生方と再会し,応用研修を行いました。また,研修参加者の先生の1人が勤めている,ウランバートル市,バガノール区保健センターを視察しました。バガノール区は,ウランバートルの9つの区の中で最も市の中心から離れています。その距離およそ130kmとあって,本センターは,実質的に近隣の市町村を含めて,この周辺地域の医療の中枢として機能しているとのことでした。
講義の様子 / 研修後には修了式が行われました
精神科については近年,入院病床が増設されるなど,拡充されている領域のようです。昨年度の研修を受講したMyagmarsuren先生も,日本から帰国された後,子どもの診療を行うために診察室を模様替えされたとのこと,今後益々のご活躍が期待されます。
子ども向けのおもちゃや絵本が並べられた診察室
また,国内ではアルコール依存症の患者が非常に多いこと,近年では若年層の拒食症が増加していることなど,モンゴル国内の精神医療の現状について,有益な情報をたくさんうかがうことができました。
さらに,モンゴル国立精神医療センターにも立ち寄り,昨年の日本での研修を経て新設されたという,カームダウンルームを見学させていただきました。部屋の壁にはフェルト生地が敷き詰められ,モンゴルらしさが感じられる部屋となっていました。まだ改修作業の途中とのことですが,まもなく実際に運用されていくようです。
新設されたカームダウンルーム
モンゴル教育大学(MNUE)では,「子供の発達障害:早期発見と支援」をテーマとした研究会議に参加しました。永田教授・副総長の挨拶で開会し,MNUEのOyunbileg先生,モンゴル医科大学(MNUMS)のBaasandorj先生,そして伊藤特任助教より,現在3大学の協力のもと進行中の,モンゴルにおける発達障害の疫学研究(ギルバーグ研究)の途中経過が報告されました。加えてMNUEのOdgerel先生,野邑特任教授,横山特任助教からも,関連トピックについて研究発表がありました。60名ほどの参加者が集まり,各発表について盛んに質疑応答が交わされました。
永田教授の開会の挨拶 / 参加者の皆様と
永田教授,野邑特任教授は,MNUEのBatbaatr学長ともお会いする時間をいただきました。学長からは名古屋大学の活動へのご理解と今後の期待についてお話をいただきました。
Odgerel先生のご協力のもと,ウランバートル市内の私設の児童発達センターの見学にうかがいました。本センターは,5歳~17歳の子どもおよそ70名が利用しているそうで,通所している子どもが持つ障害は,知的障害や,脳性麻痺など多岐にわたるそうです。モンゴルでは未だに発達障害をはじめとした障害を抱える子どもを対象とした,公的な療育機関が非常に少なく,本センターも当事者の保護者らが立ち上げたNPO法人が運営母体となっているそうです。運営スタッフや保護者から,熱心な質疑がなされ,子どもたちと一生懸命に向き合っていることがうかがえました。
児童発達センターの職員の皆様,MNUEの先生方と
MNUEでは,MTB開発チームのメンバーとも再会し,ミーティングを行いました。ミーティングでは,現在進行中の研究の進捗の報告や,今後の研究活動の方向性について共有しました。今後,新たに立ち上げていく研究についても意見を交換することができ,非常に有意義なミーティングとなりました。